口約束からの脱却—シンプルな契約書の作り方
「今まで口約束でやってきたけど、トラブルになりかけた」「契約書を作りたいけど、難しそうで手が出ない」——中小企業や個人事業主の中には、契約書を作らずに取引を続けている方が少なくありません。
本記事では、口約束のリスクと、シンプルな契約書を作るためのポイントを解説します。難しく考えなくても、基本的な契約書は作れます。
口約束のリスク
「言った言わない」のトラブル
口約束だけでは、後から「そんな話はしていない」「金額は違うはずだ」といったトラブルになることがあります。記録がないため、どちらが正しいか証明できません。
条件の認識違い
口頭での説明は、細かいニュアンスが伝わりにくいものです。「納期は来月末」と言ったつもりが、相手は「来月中旬」と理解していた——こうした認識違いが起こります。
関係悪化時のリスク
取引がうまくいっている間は問題になりませんが、何かトラブルがあったとき、契約書がないと立場が弱くなります。支払いを求めても「そんな契約はしていない」と言われる可能性があります。
担当者が変わったとき
口約束を交わした担当者が退職や異動で変わると、過去の約束が引き継がれないことがあります。契約書があれば、担当者が変わっても内容は明確です。
契約書は難しくない
法律の専門知識は不要
契約書を作るのに、法律の専門知識は必須ではありません。取引の内容を書面にまとめればよいのです。もちろん、重要な契約は専門家に確認してもらうのが安心ですが、シンプルな取引なら自分で作れます。
完璧を目指さない
最初から完璧な契約書を目指す必要はありません。まずは「何を」「いくらで」「いつまでに」といった基本事項を書面にするだけでも、口約束よりずっと安心です。
ひな形を活用する
ゼロから契約書を作る必要はありません。インターネットで契約書のひな形(テンプレート)を探し、自社の取引に合わせて修正すれば、効率的に作成できます。
シンプルな契約書に必要な項目
1. 当事者の情報
契約を結ぶ両者の情報を明記します。
- 会社名(または個人名)
- 住所
- 代表者名(法人の場合)
2. 契約の目的・内容
何についての契約なのかを明確にします。
- 提供するサービス・商品の内容
- 仕事の範囲
- 成果物がある場合はその内容
3. 金額・支払条件
お金に関する取り決めを明記します。
- 金額(税込み・税別を明記)
- 支払期日
- 支払方法(銀行振込など)
4. 納期・期間
いつまでに、またはいつからいつまでの契約かを明記します。
- 納品日・完了日
- 契約期間
- 更新の有無
5. 契約日・署名
契約を締結した日付と、両者の署名を入れます。
契約書の例(業務委託の場合)
以下は、シンプルな業務委託契約書の例です。
業務委託契約書 〇〇株式会社(以下「甲」という)と△△(以下「乙」という)は、 以下のとおり業務委託契約を締結する。 第1条(業務内容) 甲は乙に対し、以下の業務を委託する。 ・〇〇の制作 第2条(報酬) 甲は乙に対し、報酬として金〇〇円(税込)を支払う。 第3条(支払方法) 甲は、業務完了後、乙の請求に基づき、翌月末日までに 乙指定の銀行口座に振り込む方法により支払う。 第4条(納期) 乙は、〇年〇月〇日までに業務を完了する。 第5条(秘密保持) 甲乙は、本契約に関して知り得た相手方の情報を第三者に開示しない。 〇年〇月〇日 甲:〇〇株式会社 代表取締役 〇〇〇〇 印 乙:△△ 住所:〇〇〇〇 印
電子契約でさらに簡単に
テンプレートを用意しておく
電子契約サービスにテンプレートを登録しておけば、毎回ゼロから作る必要がありません。金額や日付など、変動する部分だけ入力すれば契約書が完成します。
署名・押印が不要
電子契約なら、印鑑を押す必要がありません。相手にメールで送信し、オンラインで署名してもらえば、契約が成立します。
保管も自動
締結した契約書は、電子契約サービスに自動で保存されます。紙の契約書のようにファイリングする手間がありません。
口約束から契約書への移行
新規取引から始める
既存の取引先に「今後は契約書を作りたい」と言い出しにくい場合は、新規取引から契約書を作り始めましょう。
契約更新のタイミングで
既存取引先には、契約更新のタイミングで「書面にまとめませんか」と提案するのが自然です。「トラブル防止のため」「お互いの認識を明確にするため」と説明すれば、前向きに受け止めてもらえます。
相手のためでもある
契約書は、自分を守るためだけでなく、相手を守るものでもあります。「お互いのために」という姿勢で提案しましょう。
まとめ
口約束だけの取引は、トラブルのリスクを抱えています。シンプルな契約書でも、書面にしておくことで「言った言わない」を防げます。
契約書は難しいものではありません。「何を」「いくらで」「いつまでに」を明確にするだけで、基本的な契約書は作れます。電子契約を活用すれば、作成も締結も簡単です。口約束からの脱却を、今日から始めてみませんか。
