「やっぱり紙がいい」と言われたときの説得術
電子契約を導入して取引先に提案したところ、「うちはやっぱり紙でお願いします」と言われてしまった——こうした経験はありませんか?電子契約のメリットは理解していても、相手に受け入れてもらえなければ使えません。
本記事では、紙の契約を希望する取引先への効果的な説得方法と、それでも難しい場合の対応を解説します。
「紙がいい」と言う理由を理解する
理由1:法的な不安
「電子契約は法的に有効なのか」「裁判になったら証拠にならないのでは」という不安から、紙を希望するケースがあります。特に、電子契約の経験がない方に多い懸念です。
理由2:操作への不安
「パソコンが苦手」「使い方がわからない」という操作面の不安もあります。新しいものを覚えることへの抵抗感が背景にあることもあります。
理由3:社内ルール
「うちの会社では契約書は紙で保管することになっている」「上司や経理から紙でもらうよう言われている」といった社内ルールが理由のこともあります。
理由4:なんとなくの安心感
「紙で手元にある方が安心」「デジタルは消えてしまいそうで怖い」という感覚的な理由もあります。長年紙で仕事をしてきた方ほど、この感覚は強いです。
理由5:過去の悪い経験
「以前、別の電子サービスで面倒なことがあった」という経験から、電子契約全般に抵抗を感じている場合もあります。
効果的な説得のアプローチ
押し付けず、メリットを伝える
「電子契約にしてください」と押し付けるのではなく、「御社にとってもメリットがあります」という伝え方が効果的です。相手のメリットを具体的に示しましょう。
時間のメリット
「郵便での往復が不要になるので、契約締結までの時間が数日から数分に短縮されます」
手間のメリット
「印刷・押印・郵送の手間が省けます。スマホで5分で完了します」
保管のメリット
「クラウドに自動保存されるので、ファイリングの手間がなく、必要なときにすぐ見つかります」
コストのメリット
「印紙税がかからないので、双方でコスト削減になります」
法的有効性を丁寧に説明
法的な不安に対しては、具体的な根拠を示しましょう。
「電子署名法という法律があり、2001年から施行されています」「紙の契約書と同等の法的効力が認められています」「大手企業や官公庁でも採用されています」「むしろ電子契約の方が、『誰が・いつ署名したか』の記録が明確に残ります」
操作の簡単さを実演する
操作への不安に対しては、実際に見せるのが一番です。
「こういうメールが届きます」「リンクをクリックすると、契約書が表示されます」「内容を確認したら、この署名ボタンを押すだけです」
可能であれば、訪問時にスマートフォンやタブレットで実演しましょう。
「控え」についての不安を解消
「手元に紙がないと不安」という方には、控えの取得方法を説明します。
「署名が完了すると、PDFがメールで届きます」「印刷すれば、紙と同じように保管できます」「必要であれば、弊社から紙の控えをお送りすることもできます」
段階的な導入を提案
すべての契約を一度に電子化する必要はありません。
「まずは今回の契約だけ、試しに電子契約を使ってみませんか?」「使ってみて不便であれば、次回は紙に戻しても構いません」
一度体験すれば、「思ったより簡単だった」と感じてもらえることが多いです。
社内ルールが理由の場合
担当者ではなく決裁者に説明
「社内ルールで紙」と言われた場合、担当者の一存では変更できないことがあります。可能であれば、決裁権を持つ上司や経営者に直接説明する機会をもらいましょう。
電子帳簿保存法を説明
2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化されています。電子契約で受け取った契約書を紙に印刷して保管することは認められず、電子データのまま保存する必要があります。
「法律で電子データの保存が義務付けられていますので、いずれは対応が必要になります」という観点からも説明できます。
経理部門への説明資料を提供
「経理から紙でもらうよう言われている」という場合、経理部門が電子契約に懸念を持っていることがあります。電子帳簿保存法への対応状況、税務調査での取り扱いなど、経理向けの説明資料を用意しておくと役立ちます。
それでも難しい場合の対応
無理に押し付けない
説明しても「やはり紙で」という回答であれば、無理に押し付けないことも大切です。取引関係を損なってまで電子契約を押し通す必要はありません。
紙と電子のハイブリッド運用
電子契約に対応できる取引先は電子契約、対応が難しい取引先は紙——というハイブリッド運用も現実的な選択です。電子化率100%を目指すより、可能な範囲で電子化を進める方が合理的です。
次の機会を待つ
今回は紙でも、次回の契約更新時や新規契約の際に再度提案することができます。時間が経てば、相手の状況(IT環境、担当者、社内ルール)が変わっていることもあります。
説得ではなく「選択」を提供する
選択肢を与える
「電子契約と紙、どちらでも対応できますが、どちらがよろしいですか?」と選択肢を与える方が、押し付けられた感じがなく、受け入れてもらいやすいことがあります。
メリットを伝えた上で判断を委ねる
「電子契約はこういうメリットがあります。もちろん紙でも対応可能です。ご検討ください」と伝え、判断は相手に委ねましょう。
まとめ
「やっぱり紙がいい」と言われたとき、まずは相手の理由を理解することが大切です。法的な不安、操作への不安、社内ルールなど、理由に応じた説明をすることで、受け入れてもらえる可能性が高まります。
ただし、無理に押し付けることは避けましょう。電子契約の普及は進んでいますが、すべての取引先が対応できるわけではありません。ハイブリッド運用も視野に入れつつ、徐々に電子化を広げていくのが現実的なアプローチです。
