電子契約の社内ルール整備
電子契約を導入する際には、社内ルールを整備することが重要です。ルールが曖昧なまま運用を始めると、利用方法がバラバラになったり、トラブルが発生したりする可能性があります。
本記事では、電子契約の社内ルール整備のポイントと、規程・マニュアルの作成方法を解説します。
社内ルール整備の必要性
ルールがないと起こる問題
社内ルールがないまま運用を始めると、様々な問題が発生します。電子契約と紙の契約書の使い分けが曖昧になり、承認プロセスが統一されません。契約書の命名・分類がバラバラになり、セキュリティ上の問題(不適切なアクセス等)も起こりやすくなります。また、トラブル発生時の対応が不明確になるなど、運用上の混乱を招きます。
ルール整備のメリット
一方、適切にルールを整備することで、全社で統一した運用が可能になります。利用者が迷わず使えるようになり、コンプライアンス・ガバナンスの強化につながります。監査対応の効率化も期待できます。
整備すべきルール・文書
1. 電子契約運用規程
電子契約の利用に関する基本的なルールを定める規程です。
主な記載事項
電子契約運用規程には、目的として規程の目的を記載し、適用範囲として対象となる契約や対象部門を明記します。定義では電子契約や電子署名等の定義を示し、利用対象として電子契約で締結する契約の範囲を定めます。承認権限では契約締結の決裁権限を、利用手順では基本的な利用フローを記載します。保管では契約書の保管ルールを、セキュリティではアクセス管理やセキュリティ要件を定めます。禁止事項として禁止される行為を明記し、改廃として規程の改廃手続きを記載しましょう。
2. 電子契約運用マニュアル
実際の操作手順を説明するマニュアルです。
主な記載事項
運用マニュアルには、ログイン方法としてシステムへのアクセス方法を記載し、契約書の作成ではテンプレートの選択や内容の入力方法を説明します。承認依頼では社内承認フローの手順を、送信では相手方への送信方法を示します。署名では自社側の署名方法を、確認では署名完了の確認方法を説明します。保管では契約書の保管・検索方法を記載し、よくあるトラブルと対処法としてFAQを含めましょう。
3. 決裁権限規程(または改訂)
契約締結の決裁権限を定める規程です。電子契約に対応した記載に改訂します。
確認・改訂ポイント
決裁権限規程の確認・改訂ポイントとしては、電子契約による締結も対象に含めること、電子署名の権限を明確化すること、代理署名のルールを定めることなどがあります。
規程の作成例(抜粋)
電子契約運用規程の例
第1条(目的)
本規程は、当社における電子契約の利用に関する基本事項を定め、契約業務の効率化及びコンプライアンスの確保を図ることを目的とする。
第2条(適用範囲)
本規程は、当社が締結する契約のうち、電子契約サービスを利用して締結するものに適用する。
第3条(定義)
本規程において「電子契約」とは、電子的な方法により作成・締結される契約をいいます。また「電子署名」とは、電子的な署名であって、本人の意思を確認するために付されるものをいいます。
第4条(利用対象)
以下の契約は、原則として電子契約で締結するものとする。秘密保持契約、業務委託契約、取引基本契約、その他管理部門が定める契約が対象となります。
2. ただし、以下の場合は紙の契約書とすることができる。法令により書面が要求される契約、相手方が電子契約に対応できない場合、その他管理部門が認める場合は紙での対応も可能です。
第5条(承認権限)
電子契約の締結に係る承認権限は、決裁権限規程に従うものとする。
第6条(利用手順)
電子契約の利用にあたっては、別途定める運用マニュアルに従うものとする。
第7条(保管)
締結した電子契約は、電子契約サービス上に保管するものとし、保管期間は法定保管期間または社内規程に定める期間のいずれか長い期間とする。
第8条(アクセス管理)
電子契約サービスへのアクセス権限は、業務上必要な者にのみ付与する。アクセス権限の付与・変更・削除は、管理部門が行う。
第9条(禁止事項)
利用者は、以下の行為を行ってはならない。アカウントの貸与・共有、権限のない契約の締結、契約書の不正な改変・削除などは禁止されています。
マニュアルの作成ポイント
1. 画面キャプチャを多用
操作画面のスクリーンショットを入れることで、視覚的に分かりやすくなります。
2. ステップバイステップで説明
操作手順を番号付きで、一つずつ説明します。
3. 利用者の立場で書く
IT部門や法務部門の視点ではなく、実際に使う事業部門の視点で書きましょう。
4. よくある質問(FAQ)を含める
想定される質問とその回答を記載しておくと、問い合わせを減らせます。
5. 動画マニュアルも検討
テキストだけでなく、操作の動画を用意すると、より分かりやすくなります。
ルール策定のプロセス
ステップ1:現状把握
まず現状を把握することから始めます。現在の契約業務のフロー確認、関連する既存規程の確認、利用予定部門のヒアリングを行いましょう。
ステップ2:ルール案の作成
現状把握を踏まえてルール案を作成します。運用規程の案、マニュアルの案、決裁権限規程の改訂案を作成しましょう。
ステップ3:関係者との協議
ルール案ができたら関係者と協議を行います。法務部門との協議、各事業部門との協議、経営層への報告・承認を経て、ルールを確定させます。
ステップ4:承認・施行
協議を経て規程の正式承認を得ます。施行日を決定し、社内への周知を行いましょう。
ステップ5:運用・見直し
運用開始後も継続的に改善を行います。問い合わせへの対応を行いながら、定期的な見直し・改訂を実施しましょう。
周知・教育
周知方法
ルールの周知には複数の方法を組み合わせましょう。社内ポータルでの公開、全社メールでの案内、説明会の開催などが効果的です。
教育・研修
教育・研修も重要です。導入時の研修(全利用者向け)、新入社員研修への組み込み、管理者向けの詳細研修など、対象者に応じた研修を実施しましょう。
サポート体制
運用開始後のサポート体制も整えましょう。問い合わせ窓口の設置、FAQの継続的な更新、大規模導入の場合はヘルプデスクの設置なども検討してください。
定期的な見直し
見直しのタイミング
ルールは定期的に見直すことが重要です。導入後3〜6ヶ月で初回見直しを行い、その後は年1回程度の定期見直しを実施しましょう。法改正やサービス変更時は随時対応が必要です。
見直しのポイント
見直しの際は、運用上の課題・問題点の反映、利用者からのフィードバック、法令・ガイドラインの変更への対応、サービスの機能追加への対応などを考慮しましょう。
まとめ:ルール整備で安心の運用を
電子契約の導入を成功させるためには、社内ルールの整備が不可欠です。運用規程で基本ルールを定め、マニュアルで具体的な操作手順を示すことで、全社で統一した運用が可能になります。
ルールは作って終わりではありません。運用開始後も利用者の声を聞き、継続的に見直し・改善していきましょう。

