TYPES GUIDE

契約タイプ別ガイド

「この契約書にはどんな条項が必要なのか」「契約タイプによって注意点はどう違うのか」。NDA(秘密保持契約)から国際取引契約まで、主要10タイプの契約について、必須条項、作成のポイント、よくあるトラブルと対策を体系的に解説します。

読了時間 15分 最終更新 2026-02-15
目次

DEFINITION

契約タイプ別ガイド

契約書は、取引の内容や目的によってさまざまなタイプに分類されます。NDA(秘密保持契約)、業務委託契約、雇用契約、売買契約、賃貸借契約、ライセンス契約など、それぞれのタイプには固有の必須条項があり、関連する法律も異なります。

適切な契約書を作成するためには、まず自社の取引がどのタイプに該当するかを正確に把握し、そのタイプに必要な条項を漏れなく盛り込むことが重要です。条項の抜け漏れは、後々のトラブルの原因となります。

本ガイドでは、中小企業が日常的に取り扱う10種類の契約タイプについて、それぞれの特徴、必須条項、作成時の注意点、電子契約との相性を詳しく解説します。契約書の作成やレビューの際に、該当するタイプのセクションを参照してください。

TYPE COMPARISON

契約タイプ別の特性比較

主要な契約タイプの特性を比較しました。自社の取引に該当する契約タイプの特性を把握し、適切な契約書を作成する参考にしてください。

契約タイプ印紙税典型/非典型電子契約との相性作成頻度
NDA(秘密保持契約)不課税非典型非常に良い
業務委託契約(請負)課税(第2号文書)典型非常に良い
業務委託契約(準委任)課税(第7号文書の場合)典型非常に良い
雇用契約不課税典型良い
売買契約課税(第1号文書)典型非常に良い
賃貸借契約不課税(土地の賃貸借は課税)典型良い低〜中
ライセンス契約不課税(条件による)非典型非常に良い
代理店契約課税(第7号文書の場合)非典型良い
SaaS利用規約不課税非典型非常に良い低(更新は高)
覚書・変更契約原契約に準じる非典型非常に良い

CONTRACT TYPES LIST

10種類の契約タイプ詳細ガイド

01

NDA(秘密保持契約)

取引開始前に締結する最も基本的な契約です。秘密情報の定義(何が秘密情報に該当するか)、保護義務の内容と範囲、有効期間(通常2〜5年)、違反時の損害賠償を必ず定めます。双方向NDA(相互に情報開示する場合)と片方向NDA(一方のみが開示する場合)があり、取引の実態に合わせて選択してください。秘密情報の定義が曖昧だと、実質的にほぼ全ての情報が対象となり、義務の範囲が不明確になるため注意が必要です。NDAは件数が多く定型的なため、電子契約との相性が非常に良い契約タイプです。

NDA電子契約ガイド
02

業務委託契約

フリーランスや外注先への業務発注時に必要な契約です。大きく「請負型」(成果物の完成を目的)と「準委任型」(業務の遂行を目的)に分かれ、法的性質が異なります。請負型では成果物の検収基準と瑕疵担保責任(契約不適合責任)が重要となり、準委任型では業務内容の範囲と善管注意義務の程度がポイントです。報酬の支払条件、再委託の可否、知的財産権の帰属、秘密保持義務は共通して必須の条項です。下請法の適用がある取引では、書面交付義務と支払期日の規制にも注意してください。

業務委託契約の電子化ガイド
03

雇用契約・労働条件通知

従業員を雇用する際に必要な契約です。労働基準法により、以下の事項の書面明示が義務付けられています:労働契約の期間、就業の場所・従事する業務、始業・終業の時刻、休憩・休日・休暇、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項(解雇事由を含む)。2024年4月からは、就業場所・業務の変更範囲、有期契約の更新上限、無期転換申込機会の明示も追加されました。パート・アルバイトには追加の明示事項もあるため注意してください。電子交付は労働者の同意を得て行うことが可能です。

04

売買契約・取引基本契約

商品、原材料、設備などの売買に使用する契約です。目的物の特定(品名、仕様、数量)、代金と支払条件、引渡し時期・場所、検収の方法と期限、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の範囲と期間が必須条項です。継続的な取引では「取引基本契約」と「個別契約(発注書)」を分けて運用するのが効率的です。基本契約で共通条件を定め、個別の取引ごとに数量・価格・納期を個別契約で指定する構成にします。

05

賃貸借・リース契約

オフィス、店舗、設備、車両などの賃貸借に使用します。賃貸借の目的物、賃料と支払方法、契約期間と更新条件、原状回復義務、中途解約の条件(違約金を含む)が必須事項です。不動産の賃貸借では借地借家法の強行規定に注意が必要です。定期建物賃貸借契約では、書面による事前説明が法定要件ですが、2022年の法改正により電子化が認められています。敷金・保証金の返還条件と敷引き特約の有効性についても明確に定めてください。

賃貸借契約の電子化ガイド
06

ライセンス契約・知的財産保護

ソフトウェア、特許、商標、著作物などの知的財産の使用許諾に関する契約です。許諾の範囲(独占/非独占、地域、期間)、使用条件と制限事項、ロイヤリティの計算方法と支払条件、知的財産権の侵害保証が主要条項です。サブライセンス(再許諾)の可否、改良発明の取り扱い、契約終了後の使用停止義務も重要なポイントです。ソフトウェアライセンスではSaaS型とオンプレミス型で契約構成が異なるため、提供形態に合った条項設計が必要です。

ライセンス契約の電子化ガイド
07

代理店・販売パートナー契約

自社製品・サービスの販売を第三者に委託する際の契約です。代理店の権限範囲(代理権の範囲、独占/非独占)、担当テリトリー、販売目標(ノルマ)、手数料体系、競合品の取り扱い制限、商標の使用条件が主な条項です。販売代理店と特約店では法的な位置づけが異なるため、自社のビジネスモデルに合った契約形態を選択してください。独占禁止法の不公正な取引方法に該当しないよう、テリトリー制限や再販価格の拘束には注意が必要です。

代理店契約の電子化ガイド
08

SaaS・サブスクリプション利用規約

クラウドサービスやサブスクリプションモデルの利用条件を定める契約です。サービスの内容と提供条件、料金体系と支払条件、SLA(サービス品質保証)、データの取り扱い(所有権、バックアップ、返還)、契約解除と自動更新のルールが主要条項です。利用規約の変更方法(事前通知期間、同意みなし規定)と、サービス終了時のデータ移行に関する取り決めも重要です。個人情報保護法に基づくデータの取り扱いについても明確に定める必要があります。

SaaS利用規約の電子化ガイド
09

覚書・変更契約・合意解約

既存契約の一部変更や合意に基づく解約を行う際の文書です。覚書は原契約を特定した上で、変更する条項、変更内容、変更の効力発生日を明確に記載します。法的効力は契約書と同等ですが、原契約との関係を明確にしないとどちらが優先するかで争いが生じるリスクがあります。合意解約書では、解約日、未履行債務の精算方法、秘密保持義務の残存、損害賠償の有無を定めてください。変更が複数回に及ぶ場合は、変更契約書の通番管理が重要です。

10

国際取引・英文契約

海外の取引先と締結する契約です。日本語の契約書と異なり、英文契約には独自の構成と専門用語があります。準拠法(どの国の法律で契約を解釈するか)、管轄裁判所または仲裁条項(紛争をどこで解決するか)、不可抗力条項(Force Majeure)、損害賠償の制限(Limitation of Liability)、補償条項(Indemnification)が特に重要です。Entire Agreement Clause(完全合意条項)により、契約書に記載されていない口頭の合意は効力を持たないとされるため、全ての合意事項を契約書に盛り込む必要があります。

GETTING STARTED

ステップガイド

1

契約の目的と種類を明確にする

取引の内容を分析し、どの契約タイプに該当するかを特定します。業務委託であれば「請負」か「準委任」かの区別が重要です。複数の性質を持つ取引の場合は、主たる契約タイプをベースにしつつ、副次的な要素も条項に含めます。契約の目的を明確にすることで、必須条項の洗い出しが容易になります。

2

テンプレートを選択・カスタマイズする

該当する契約タイプのテンプレートを選び、自社の取引内容に合わせてカスタマイズします。テンプレートの条項を追加・修正・削除する際は、法的なリスクがないか確認してください。特に損害賠償条項、解除条項、知的財産権の帰属は取引ごとに慎重な検討が必要です。

3

必須条項のチェックリストで確認する

契約タイプ別の必須条項チェックリストを使い、条項の抜け漏れがないか確認します。当事者の特定、目的物/業務の定義、対価と支払条件、期間と更新、解除事由、損害賠償、秘密保持、一般条項が共通の基本項目です。タイプ固有の条項(業務委託なら知的財産権帰属、雇用契約なら労基法の明示事項)も確認してください。

4

法務レビューを実施する

作成した契約書のドラフトを、法務担当者または外部弁護士にレビューしてもらいます。特に新規の契約タイプ、高額な取引、新規取引先との契約は、専門家のチェックを強く推奨します。法務レビューのポイントは、法令への適合性、自社に不利な条項の特定、曖昧な表現の是正です。

5

電子契約で締結・保管する

最終版をPDFに変換し、電子契約サービスで署名依頼を送信します。電子契約であれば印紙税が不要となるため、課税文書に該当する契約タイプ(請負契約、売買契約等)では特に大きなコスト削減効果があります。署名完了後は、契約タイプ別のフォルダやタグで分類して保管し、検索性を確保してください。

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CAUTIONS

注意点

契約タイプの誤認に注意

取引の実態と契約書のタイトルが異なるケースがあります。例えば、「業務委託契約」と題していても、業務の実態が雇用に該当する場合は偽装請負と判断されるリスクがあります。契約タイプは書面のタイトルではなく、取引の実態で判断されることを理解しておいてください。

印紙税の過不足に注意

契約タイプによって印紙税の課否が異なります。NDAや雇用契約は不課税ですが、請負契約や売買契約は課税文書に該当します。電子契約であればいずれも印紙税不要ですが、紙で締結する場合は、契約タイプに応じた正しい印紙税を確認してください。

複合型契約の取り扱い

1つの契約に複数のタイプの要素が含まれる場合(例:製品の売買+保守サービス、ソフトウェアライセンス+カスタマイズ開発)は、各要素に適用される法律や条項が異なる場合があります。主たる要素を基本としつつ、副次的な要素についても適切な条項を盛り込んでください。

消費者契約と事業者間契約の区別

BtoC(対消費者)の契約では、消費者契約法により事業者に不利な特則が適用されます。不当条項の無効、消費者の取消権、不実告知による取消しなど、事業者間契約にはない制約があります。自社の取引が消費者契約に該当するかを確認し、該当する場合は消費者保護の要件を満たす契約内容にしてください。

FAQ

よくある質問

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