記事一覧に戻る
活用事例

契約管理の属人化を解消するワークフロー設計

作成: AI監修: 金井泰樹 2026年1月13日
契約管理の属人化を解消するワークフロー設計

契約管理の属人化とは

属人化の典型的な症状

契約管理が属人化している組織では、以下のような症状が見られます。

特定の担当者への依存

  • 「契約のことは〇〇さんに聞いて」が口癖になっている
  • 担当者が不在だと契約業務が進まない
  • 担当者の異動・退職で業務が混乱する

情報の偏在

  • 契約書がどこにあるか担当者しか知らない
  • 契約の経緯や背景が担当者の記憶にしかない
  • 更新期限を担当者が個人的に管理している

業務プロセスの不透明さ

  • 契約締結までの手順が明文化されていない
  • 担当者によって進め方が異なる
  • 承認ルートが曖昧で、誰に確認すればいいかわからない

属人化がもたらすリスク

契約管理の属人化は、以下のようなリスクをもたらします。

リスク 具体的な問題
業務継続リスク 担当者の不在時に業務が停滞
品質リスク 担当者によって契約内容の品質にばらつき
コンプライアンスリスク 承認プロセスの不備、契約書の紛失
機会損失リスク 更新期限の見落とし、対応の遅れ
引き継ぎリスク 異動・退職時の情報喪失

属人化が起きる原因

原因1:業務プロセスが明文化されていない

契約業務の手順が明文化されておらず、「やり方は見て覚える」「経験で判断する」状態になっていると、属人化が進みます。

よくある状況

  • 契約書作成の手順書がない
  • 承認ルートが口頭で伝えられている
  • 例外対応のルールが決まっていない

原因2:情報が分散・散逸している

契約に関する情報が一元管理されておらず、担当者の個人フォルダやデスクに分散していると、担当者以外はアクセスできなくなります。

よくある状況

  • 契約書が担当者のローカルPCに保存されている
  • 契約交渉の経緯がメールの中に埋もれている
  • 契約台帳が更新されていない、または存在しない

原因3:システムが整備されていない

契約管理のためのシステムがなく、紙やExcelで管理していると、情報共有や進捗管理が難しくなります。

よくある状況

  • 契約書は紙でキャビネットに保管
  • 契約台帳はExcelで個人管理
  • 承認は紙の回覧やメールで実施

原因4:役割分担が不明確

契約業務における役割分担が明確でないと、「なんとなく〇〇さんがやっている」という状態になり、属人化が進みます。

よくある状況

  • 契約業務の責任者が決まっていない
  • 誰がどこまで対応するのか曖昧
  • 法務チェックの基準が不明確

属人化を解消するワークフロー設計の原則

原則1:プロセスを可視化・標準化する

契約業務のプロセスを可視化し、誰が担当しても同じ手順で進められるように標準化します。

可視化のポイント

  • 契約締結までの流れを図示する
  • 各ステップでの作業内容を明確にする
  • 判断基準を明文化する

原則2:情報を一元管理する

契約に関する情報を一か所に集約し、関係者が必要な時にアクセスできるようにします。

一元管理すべき情報

  • 契約書本体
  • 契約に関するメタデータ(契約日、相手方、金額、期限など)
  • 契約交渉の経緯
  • 関連する添付資料

原則3:役割と権限を明確にする

契約業務における役割分担と、各役割の権限を明確に定義します。

定義すべき項目

  • 誰が契約書を作成するのか
  • 誰が承認するのか(承認権限の範囲)
  • 誰が相手方に送信するのか
  • 誰が契約書を管理するのか

原則4:システムで業務を支援する

電子契約サービスや契約管理システムを活用し、業務プロセスをシステム化します。

システム化のメリット

  • 手順に沿った操作を強制できる
  • 進捗状況が自動的に記録される
  • 承認履歴が残る
  • 検索・参照が容易になる

ワークフロー設計の実践

ステップ1:現状の業務フローを整理する

まず、現在の契約業務がどのように行われているかを整理します。

整理する項目

項目 内容
契約の種類 どのような契約があるか
関係者 誰が関わっているか
作業内容 各ステップで何をしているか
使用ツール 何を使って作業しているか
所要時間 各ステップにどれくらい時間がかかるか
課題 どこに問題があるか

現状フローの例(属人化している状態)

  1. 営業担当が契約内容を決める
  2. 営業担当が過去の契約書を探してコピー
  3. 営業担当が内容を修正
  4. 上司にメールで確認依頼(承認基準は曖昧)
  5. 上司がメールで「OK」と返信
  6. 営業担当が印刷して押印依頼
  7. 相手方に郵送
  8. 返送された契約書を営業担当のデスクで保管

ステップ2:あるべきフローを設計する

現状の課題を踏まえ、属人化を解消したあるべきフローを設計します。

設計のポイント

明確な開始条件を定める

  • どのような場合に契約締結が必要か
  • 契約締結の依頼はどのように行うか

標準的なプロセスを定義する

  • 契約書作成の手順
  • 承認のルート
  • 相手方への送信方法
  • 締結後の保管方法

例外処理のルールを決める

  • 標準と異なる条件の場合はどうするか
  • 急ぎの場合はどうするか
  • 相手方から修正要求があった場合はどうするか

あるべきフローの例(属人化を解消した状態)

  1. 営業担当がシステムで契約締結を申請(契約種類を選択、必要情報を入力)
  2. システムが契約種類に応じたテンプレートを適用
  3. 契約金額に応じた承認ルートに自動振り分け(100万円未満:課長承認、100万円以上:部長承認、500万円以上:部長承認+法務確認)
  4. 承認者がシステム上で内容確認・承認
  5. 承認完了後、電子契約サービスから相手方に自動送信
  6. 相手方が電子署名
  7. 自社が電子署名
  8. 締結完了、契約書が自動的に契約管理システムに保存
  9. 更新期限の3か月前に担当者・管理者にアラート

ステップ3:承認ルートを設計する

契約の内容に応じた承認ルートを設計します。

契約金額による分岐

契約金額 承認ルート
100万円未満 課長承認
100万円以上500万円未満 部長承認
500万円以上1,000万円未満 本部長承認
1,000万円以上 役員承認

契約種類による分岐

契約種類 承認ルート
秘密保持契約(標準) 課長承認のみ
秘密保持契約(修正あり) 課長承認+法務確認
業務委託契約 部長承認+法務確認
重要な契約 本部長承認+法務確認+経営会議

リスクによる分岐

リスク区分 承認ルート
低リスク(定型契約) 簡易承認
中リスク(一部カスタマイズ) 通常承認
高リスク(大幅カスタマイズ) 厳格承認+法務確認必須

ステップ4:役割と責任を定義する

契約業務に関わる役割と、それぞれの責任を明確に定義します。

役割定義の例

役割 担当者 責任
申請者 営業担当 契約内容の入力、相手方との交渉
承認者 上長(課長・部長等) 契約内容の承認、金額・条件の妥当性確認
法務確認者 法務部門 法的リスクの確認、契約条項のチェック
契約管理者 総務・法務部門 契約書の保管、更新管理、台帳管理
システム管理者 情報システム部門 電子契約サービスの管理、権限設定

責任範囲の明確化

申請者の責任

  • 契約内容の正確な入力
  • 相手方情報の確認
  • 必要書類の添付
  • 承認者・法務への適切な情報提供

承認者の責任

  • 契約内容の妥当性確認
  • 予算・権限範囲内であることの確認
  • 承認/差戻しの判断
  • 承認期限内の対応

法務確認者の責任

  • 法的リスクの評価
  • 契約条項の適切性確認
  • 修正が必要な場合の指摘
  • 法務見解の記録

契約管理者の責任

  • 締結済み契約書の適切な保管
  • 契約台帳の更新
  • 更新期限の管理とアラート
  • 契約書の検索・閲覧対応

ステップ5:ルールを文書化する

設計したワークフローとルールを文書化し、関係者に共有します。

文書化すべき内容

文書 内容
契約管理規程 契約業務の基本方針、適用範囲、用語定義
契約締結フロー 契約種類ごとの締結手順
承認権限表 契約金額・種類ごとの承認者
操作マニュアル 電子契約サービスの操作方法
FAQ よくある質問と回答

電子契約サービスのワークフロー機能活用

承認ワークフロー機能

多くの電子契約サービスには、承認ワークフロー機能が備わっています。

設定できる項目の例

項目 設定内容
承認者 誰が承認するか(役職、個人)
承認順序 順次承認か、並列承認か
承認条件 全員承認か、いずれか一人の承認か
代理承認 承認者不在時の代理設定
承認期限 承認のタイムリミット
リマインド 未承認時の催促通知

ワークフロー設定の例

【業務委託契約(500万円以上)のワークフロー】

  1. ステップ1:上長承認(承認者:申請者の直属上長、期限:申請から3営業日以内)
  2. ステップ2:法務確認(承認者:法務部門、期限:上長承認から5営業日以内)
  3. ステップ3:部長承認(承認者:申請者の所属部門の部長、期限:法務確認から3営業日以内)
  4. ステップ4:相手方送信(上記すべての承認完了後、自動的に相手方に送信)

条件分岐の設定

契約金額や契約種類によって、承認ルートを自動的に分岐させることができます。

条件分岐の例

契約金額を判定:

  • 100万円未満の場合 → 課長承認のみ
  • 100万円以上500万円未満の場合 → 課長承認 → 部長承認
  • 500万円以上の場合 → 課長承認 → 法務確認 → 部長承認

通知・アラート機能

ワークフローの進捗に応じて、関係者に通知を送る機能を活用します。

通知のタイミング例

タイミング 通知先 内容
承認依頼時 承認者 「承認依頼が届きました」
承認完了時 申請者 「承認されました」
差戻し時 申請者 「差戻しされました」
期限超過時 承認者・管理者 「承認期限を過ぎています」
契約締結完了時 関係者全員 「契約が締結されました」

属人化解消のための運用ルール

ルール1:個人保管を禁止する

契約書や関連資料を個人のPCやデスクに保管することを禁止し、共有の場所に保管するルールを徹底します。

具体的なルール

  • 契約書は必ず電子契約サービスまたは契約管理システムに保存
  • 交渉経緯のメールは案件フォルダに転送・保存
  • 関連資料は契約書と紐づけて保存

ルール2:進捗をシステムで管理する

契約の進捗状況は、担当者の頭の中や個人のメモではなく、システム上で管理します。

管理すべきステータス

  • 作成中
  • 承認待ち
  • 承認済み(送信前)
  • 送信済み(相手方対応待ち)
  • 相手方署名済み(自社対応待ち)
  • 締結完了
  • 差戻し・保留

ルール3:引き継ぎを仕組み化する

担当者の異動・退職時に、契約業務がスムーズに引き継がれる仕組みを作ります。

引き継ぎの仕組み

  • 契約情報はシステムに集約されているため、アクセス権限の変更のみで引き継ぎ完了
  • 進行中の案件は、システム上でステータスと経緯を確認可能
  • 引き継ぎチェックリストを用意し、漏れを防止

ルール4:定期的な棚卸しを行う

契約の状況を定期的に棚卸しし、問題がないか確認します。

棚卸しの項目

  • 更新期限が近づいている契約
  • 長期間ステータスが変わっていない案件
  • 担当者が不明確な契約
  • 保管場所がルール通りでない契約

属人化解消の効果測定

測定すべき指標

属人化解消の効果を測定するための指標を設定します。

指標 測定方法 目標例
担当者不在時の対応率 担当者不在時に別の担当者が対応できた割合 90%以上
契約書の所在把握率 任意の契約書を5分以内に見つけられる割合 100%
引き継ぎ所要時間 担当者変更時の引き継ぎにかかる時間 1時間以内
承認リードタイム 申請から承認完了までの平均時間 3営業日以内
プロセス遵守率 定められたフローに従って処理された割合 95%以上

効果測定の方法

定量的な測定

  • システムのログから処理時間を集計
  • 契約管理台帳から件数・ステータスを分析
  • アンケートで担当者の負担感を調査

定性的な測定

  • 担当者へのヒアリング
  • 問題事例の収集と分析
  • 改善要望の収集

よくある課題と対処法

課題1:ルールが形骸化する

症状

  • 決められたルールが守られない
  • 例外対応が常態化する
  • いつの間にか元の属人的なやり方に戻る

対処法

  • システムで強制できる部分はシステム化する
  • 定期的にルールの遵守状況をチェックする
  • ルールが実態に合わない場合は見直す
  • 経営層からルール遵守の重要性を発信する

課題2:承認が滞る

症状

  • 承認者が忙しくて承認が進まない
  • 承認待ちの案件がたまる
  • 契約締結が遅れる

対処法

  • 承認期限を設定し、リマインドを送る
  • 代理承認者を設定する
  • 承認権限を適切に委譲する
  • 承認が滞っている案件を可視化する

課題3:現場の抵抗がある

症状

  • 「今までのやり方で問題ない」という声
  • 新しいシステムを使いたがらない
  • ルールを無視して従来のやり方を続ける

対処法

  • 属人化のリスクを具体的に説明する
  • 新しいやり方のメリットを体感してもらう
  • 現場の意見を聞いてルールを調整する
  • 成功事例を共有する

まとめ

契約管理の属人化を解消するためには、業務プロセスの標準化、情報の一元管理、役割と権限の明確化、そしてシステムによる業務支援が必要です。

属人化解消のポイント

  1. プロセスを可視化・標準化する—誰が担当しても同じ手順で進められるように
  2. 情報を一元管理する—契約書と関連情報を一か所に集約
  3. 役割と権限を明確にする—誰が何をするのかを定義
  4. システムで業務を支援する—電子契約サービスのワークフロー機能を活用
  5. ルールを文書化し、運用を徹底する—形骸化を防ぐ仕組みづくり

電子契約の導入は、属人化を解消する絶好の機会です。単にツールを入れるだけでなく、業務プロセス全体を見直し、誰が担当しても同じ品質で契約業務を遂行できる体制を構築しましょう。

メルマガで最新情報をお届け

電子契約の基礎知識・活用ノウハウ・法改正情報などを配信

登録は無料です。いつでも配信解除できます。

作成

AI

監修

金井泰樹

RELATED POSTS

関連記事

01
活用事例
2026年1月13日

リモートワーク時代に欠かせない電子契約の活用法

02
活用事例
2026年1月13日

契約書のテンプレート化で業務効率を劇的に改善する方法

03
活用事例
2026年1月13日

スタートアップのための電子契約活用術

電子契約についてもっと詳しく知りたい方へ

電子契約の仕組み、法的根拠、導入メリットまで体系的に理解できる完全ガイド

GET STARTED

契約は、シンプルでいい。

契約書の作成から署名依頼、保管まで。アカウント登録から最短30秒で契約書を送信できます。