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電子契約の基礎

電子契約における本人確認の方法と法的要件

作成: AI監修: 金井泰樹 2026年1月13日
電子契約における本人確認の方法と法的要件

電子契約における本人確認の重要性

紙の契約書であれば、対面で本人確認をした上で署名・押印をもらうことが一般的です。相手の顔を見て、名刺を交換し、その場で契約書に署名をもらうというプロセスの中で、自然と本人確認が行われています。しかし電子契約では、相手の顔が見えない状態で契約を締結することになります。

「メールアドレスさえあれば誰でも署名できてしまうのでは?」「なりすましのリスクはないのか?」という懸念を持つ方も多いでしょう。本記事では、電子契約における本人確認の方法と、法的に求められる要件について詳しく解説します。適切な本人確認プロセスを理解することで、安心して電子契約を活用できるようになります。

電子署名法が求める本人確認

電子署名法では、電子署名に押印と同等の法的効力を認めるための要件を定めています。この法律を理解することが、電子契約における本人確認を考える出発点となります。

電子署名法第3条の要件

電子署名法第3条では、一定の要件を満たす電子署名に「真正に成立したものと推定する」効力を認めています。この推定効を得るためには、「本人性の確認」「非改ざん性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。本人性の確認とは、電子署名が本人によって行われたことが確認できることを意味し、非改ざん性の確保とは、電子署名後に電磁的記録が改変されていないことが確認できることを意味します。

つまり、法的に有効な電子契約を締結するためには、「確かに本人が署名した」ことを担保する仕組みが必要なのです。この仕組みをどのように構築するかが、電子契約サービスの重要な差別化ポイントとなっています。

本人確認の方法:レベル別に整理

電子契約における本人確認には、セキュリティレベルに応じていくつかの方法があります。レベルが上がるほど本人確認の厳格さは増しますが、同時に署名者の手間も増えることになります。契約のリスクに応じて適切なレベルを選択することが重要です。

レベル1:メールアドレス認証

最も基本的な本人確認方法です。契約相手のメールアドレスに署名依頼を送信し、そのメールを受け取った人だけが署名できる仕組みです。具体的には、署名依頼メールに一意のURL(ワンタイムリンク)を記載し、そのURLにアクセスした人だけが契約書を閲覧・署名できるようになっています。メールアドレスの所有者が署名者であるという前提に基づいた認証方式です。

この方式は、既存の取引先との日常的な契約や、低〜中リスクの契約、スピードを重視する場面に適しています。多くの電子契約サービスがこの方式を標準として採用しており、実務上最も広く使われている本人確認方法です。

レベル2:アクセスコード認証

メールアドレス認証に加えて、別の認証要素を追加する方法です。署名時に、別途共有したアクセスコード(パスワード)の入力を要求します。このアクセスコードは、メールとは別の手段、例えば電話やSMS、別のメールアドレスなどで伝達します。これにより、二要素認証に近い効果を得ることができます。

この方式は、中程度のリスクがある契約、新規取引先との契約、金額の大きい契約などに適しています。万が一メールが第三者に転送されても、アクセスコードがなければ署名できないため、なりすましのリスクを低減できます。

レベル3:SMS認証

携帯電話番号を使った認証方式です。署名時に、登録された携帯電話番号にSMSで認証コードを送信し、その認証コードを入力することで本人確認を行います。携帯電話番号は契約者本人に紐づいている可能性が高いため、メールアドレスよりも高い本人性の担保が期待できます。

この方式は、BtoC取引(個人との契約)や、本人性をより厳格に確認したい場面に適しています。特に、個人の顧客との契約では、メールアドレスよりも携帯電話番号の方が本人に紐づいている確度が高いため、有効な選択肢となります。

レベル4:電子証明書による認証

認証局が発行する電子証明書を使った、最も厳格な本人確認方法です。署名者は事前に認証局から電子証明書の発行を受ける必要があります。認証局は、運転免許証や登記簿謄本などの本人確認書類を確認した上で証明書を発行するため、本人性が高いレベルで保証されます。署名時には電子証明書を使用し、認証局が本人性を保証する形になります。

この方式は、不動産取引や金融取引などの高リスクの契約、法律で電子証明書の使用が求められる場合、紛争リスクが高い取引などに適しています。導入のハードルは高いものの、法的な証拠力という観点では最も強固な方式です。

当事者型と立会人型の違い

電子契約サービスは、本人確認の方式によって「当事者型」と「立会人型」の2つに大きく分類されます。それぞれの特徴を理解しておくことで、自社に適したサービスを選択できます。

当事者型(当事者署名型)

当事者型では、署名者本人が認証局から電子証明書の発行を受けます。認証局が本人確認を行い、署名者の本人性を保証する仕組みです。この方式は、電子署名法第3条の推定効を得やすいというメリットがあります。一方で、署名者全員が電子証明書を取得する必要があるため、導入のハードルが高いというデメリットもあります。相手方にも電子証明書の取得を求める必要があるため、取引先の協力が不可欠です。

立会人型(事業者署名型)

立会人型では、電子契約サービス事業者が「立会人」として署名プロセスに関与します。署名者の本人確認は、メールアドレス認証などサービスごとの方法で実施されます。電子証明書の取得が不要なため導入が容易で、現在多くの企業がこの方式を採用しています。

立会人型であっても、適切な本人確認プロセスを経ていれば、法的に有効な電子契約として認められます。2020年の政府見解でも、立会人型電子契約が電子署名法第3条の要件を満たしうることが確認されており、実務上は立会人型で十分なケースがほとんどです。

本人確認のレベルを選ぶ基準

どのレベルの本人確認を採用するかは、契約のリスクに応じて判断します。すべての契約に最高レベルの本人確認を適用する必要はなく、リスクとコスト・手間のバランスを考慮して選択することが重要です。

考慮すべき要素

本人確認レベルを選択する際には、いくつかの要素を総合的に考慮する必要があります。まず契約金額です。金額が大きいほど、なりすましによる損害も大きくなるため、厳格な本人確認が望ましいと言えます。次に取引先との関係です。長年取引のある既存の取引先であれば、相手のメールアドレスが正しいことはほぼ確実ですが、初めての取引先との契約では慎重な対応が必要です。

契約の重要性も重要な判断要素です。事業への影響度が高い契約、例えば事業提携契約や大型の取引基本契約などは、より厳格な本人確認を検討すべきでしょう。また、紛争リスクも考慮が必要です。後日、契約の成立自体が争われる可能性がある場合は、証拠力の高い本人確認方法を選択しておくと安心です。さらに、業界の慣行や規制によっては、厳格な本人確認が求められる場合もあります。

実務上のバランス

本人確認を厳格にすればするほど、署名者の手間は増えます。電子証明書の取得が必要になれば、相手方が電子契約自体を敬遠してしまう可能性もあります。契約締結のスピードと本人確認のレベルはトレードオフの関係にあるため、リスクに応じた適切なバランスを取ることが重要です。

多くの企業では、日常的な契約は「メールアドレス認証」で処理し、重要な契約には「アクセスコード認証」や「SMS認証」を追加するといった使い分けをしています。社内で契約類型ごとの本人確認レベルを定めておくと、運用がスムーズになります。

本人確認以外の証拠の蓄積

本人確認の仕組みだけでなく、契約締結時の状況を詳細に記録しておくことも、法的な証拠力を高める上で重要です。電子契約サービスは、様々な情報を自動的に記録する機能を備えています。

記録すべき情報

まずIPアドレスです。署名時のアクセス元IPアドレスを記録することで、どこから署名操作が行われたかを特定できます。次にタイムスタンプです。署名した日時を第三者機関によって証明することで、いつ契約が締結されたかを客観的に証明できます。デバイス情報として、使用されたブラウザやOSなどの情報を記録することも有効です。さらに、操作ログとして、契約書の閲覧開始時刻、各ページの閲覧時間、署名操作の時刻などを詳細に記録することで、署名者が契約内容を確認した上で署名したことを証明できます。

これらの情報は「監査証跡(Audit Trail)」として記録され、後日、契約の成立が争われた際の証拠となります。多くの電子契約サービスは、これらの情報を自動的に記録し、監査証跡レポートとして出力できる機能を備えています。

なりすまし対策のベストプラクティス

どれほど優れた本人確認の仕組みがあっても、なりすましのリスクを完全にゼロにすることはできません。以下のベストプラクティスを参考に、リスクを最小限に抑えましょう。

正しいメールアドレスの確認

署名依頼を送る前に、相手のメールアドレスが正しいことを確認することが最も基本的かつ重要な対策です。名刺交換時に受け取った名刺のメールアドレス、会社のWebサイトで公開されているアドレスなど、複数のソースと照合して二重チェックを行いましょう。タイプミスで別人にメールが届いてしまうリスクも考慮が必要です。

重要な契約には追加認証

金額が大きい契約、長期間にわたる契約、紛争リスクが高い契約については、メールアドレス認証だけでなく、アクセスコード認証やSMS認証を追加することをお勧めします。追加の認証要素を設けることで、なりすましのハードルを大幅に上げることができます。

署名前の電話確認

特に重要な契約や初めての取引先との契約では、署名依頼を送った旨を電話でも伝えることが効果的です。「先ほど電子契約の署名依頼をお送りしましたので、ご確認ください」と一言伝えるだけで、なりすましリスクを大幅に低減できます。また、相手方が電子契約に慣れていない場合のサポートにもなります。

社内ルールの整備

契約金額や契約種類に応じて、どのレベルの本人確認を採用するかを社内ルールとして整備しておきましょう。例えば、「100万円以上の契約にはアクセスコード認証を必須とする」「新規取引先との最初の契約にはSMS認証を使用する」といったルールを定めておくことで、担当者ごとの判断のばらつきをなくし、一貫したセキュリティレベルを維持できます。

まとめ:リスクに応じた本人確認を

電子契約における本人確認は、契約の法的有効性を担保するために不可欠な要素です。適切な本人確認プロセスを経ることで、電子契約は紙の契約書と同等、あるいはそれ以上の法的効力を持つことができます。

本人確認のレベルは、契約のリスクに応じて選択することが重要です。日常的な契約であればメールアドレス認証で十分な場合も多いですが、重要な契約には追加の認証手段を組み合わせることをお勧めします。また、監査証跡として契約締結時の状況を詳細に記録しておくことで、万が一の紛争時にも対応できる体制を整えておきましょう。

電子契約サービスを選ぶ際は、どのような本人確認方法に対応しているか、監査証跡がどのように記録されるかを必ず確認してください。自社の契約リスクに応じた本人確認が可能なサービスを選ぶことで、安全かつ効率的な電子契約運用を実現できます。

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作成

AI

監修

金井泰樹

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